銀行口座凍結の解除方法。相続の仮払い制度で葬儀費用・生活費を引き出す手順
1口座はいつ・どうやって凍結されるのか
銀行口座は、死亡届の提出によって自動的に凍結されるわけではありません。銀行が死亡の事実を「知った時点」で凍結されるのが実務上のルールです。遺族からの連絡や、窓口でのお悔やみの言葉、新聞のお悔やみ欄などがきっかけになることもあります。
凍結されると、次のようなことが一斉にできなくなります。
- ATM・窓口での引き出し、振込
- 公共料金・家賃・保険料などの自動引き落とし(口座振替が止まる)
- 定期預金の解約
2凍結前に勝手に引き出してはいけない理由
「凍結される前に、必要な分だけ引き出しておこう」と考えてしまいがちですが、これは大きなリスクを伴います。故人の預金を引き出して生活費や葬儀費以外に使ってしまうと、相続財産の処分とみなされ「単純承認」が成立し、後から相続放棄ができなくなるおそれがあるためです。借金の有無がまだ分からない段階では、特に注意が必要です。
また、相続人が複数いる場合、無断での引き出しは他の相続人との深刻なトラブルの原因にもなります。急いで動く前に、次に紹介する正式な制度を使いましょう。
3仮払い制度で葬儀費用・生活費を引き出す手順
2019年の民法改正(909条の2)で、遺産分割が終わる前でも、相続人が単独で一定額を払い戻せる「仮払い制度」が設けられました。葬儀費用や当面の生活費に充てられます。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 払い戻せる金額 | 相続開始時の残高 ×1/3 ×自分の法定相続分(1金融機関あたり上限150万円) |
| 必要書類の目安 | 被相続人の出生〜死亡までの連続戸籍(除籍・改製原含む)、相続人全員の戸籍、請求者の印鑑証明書 |
| かかる期間の目安 | 書類が揃ってから2週間〜1ヶ月ほど |
口座が複数の銀行にまたがっている場合は、銀行ごとに個別の手続きが必要です。戸籍集めが負担になりますが、令和6年に始まった広域交付制度を使えば最寄りの役所でまとめて取得できます(戸籍の広域交付制度のやさしい使い方)。
4凍結を解除して相続手続きを進める流れ
凍結を正式に解除して口座を解約・払い戻しするには、遺産分割協議書または遺言書、相続人全員の同意書類などをそろえて金融機関へ提出します。必要書類は金融機関ごとに異なるため、事前に電話やWebで確認してから窓口へ行くと二度手間を防げます。
相続税の申告期限(10ヶ月以内)や相続放棄の期限(3ヶ月以内)とも関わるため、口座凍結の手続きだけを切り離さず、死亡後手続きの期限カレンダーとあわせて全体のスケジュールを把握しておくと安心です。
5よくある質問
Q. 家族が亡くなったら、すぐ銀行に連絡すべき?
A. 連絡すると口座は凍結され、公共料金などの引き落としも止まります。引き落とし先の変更を先に整理してから連絡するのが実務上おすすめです。ただし放置してよいわけではなく、落ち着いたタイミングで速やかな連絡が必要です。
Q. 仮払い制度はどこの窓口で申請する?
A. 口座がある金融機関の窓口で申請します。必要書類は金融機関ごとに異なるため、事前に電話で確認するとスムーズです。
Q. 凍結された口座から生活費が出せず困っている場合は?
A. 仮払い制度(1金融機関あたり上限150万円)の利用を検討してください。それでも不足する場合や判断に迷う場合は、司法書士・弁護士などの専門家にご相談ください。